2011年5月28日土曜日

Xcode 4のシングルイウンドウUIに垣間見るOSX Lionの本気度

まもなくAppleの開発者向けイベント、WWDC 2011が6月6日(日本時間7日深夜)から10日の予定で開催される。注目はもちろんiPhone 5、iOS 5が発表されるのかというのが一つとしてはあるけれど、もう一つの注目ポイントとしてMac OSXのメジャーバージョンアップ、Mac OSX Lion (10.7) の発表がある。

Mac OSX Lionは2010年の10月に、その概要が発表された。特徴は、iPadに見られるようなフルスクリーンUIをOSXの世界にも導入した「Launchpad」や「フルスクリーンアプリケーション」。これは単純にiPhone、iPadの人気にOSXが便乗しようとしているだけにも見えるけれど、Appleはこの大胆な変更に本気で取り組んでいて、これでiOSのエコシステムをOSXの世界にも広げようとしているように見える。



OSXのフルスクリーンUIに対する「本気度」を最も良く示すのが、OSX Lionの発表に前後してリリースされた開発ツールのXcode 4だと思う。これまでのUIを一新し、ややもするとiTunesと見間違うかのようなシングルウインドウUIに生まれ変わった。これまで別のアプリケーションだったInterface Builderも統合した大胆な変更は賛否両論を呼んでいる(個人的にもまだ荒削りで分かりづらい部分があると思うので、UIは今後も試行錯誤がしばらく続くんじゃないかと思っている)。

しかし、そのような賛否両論を百も承知で複雑なツールの代表格であるIDEにシングルウインドウUIを導入したそのことこそ、AppleにとってOSXにシングルウインドウUIを持ち込む事がいかに重要であるかを示しているのではないかと思う。

開発者はそもそもにおいて、複雑でもすみずみまで操作できるようなコックピットUIだったり、もっと極端にはコマンドラインインターフェースを好んだりするものだ。いまだXcode 3を使い続けている開発者も多いと思う。確かにソフト開発においてはデバイスの挙動、メモリ配置の隅々まで把握しないと高いパフォーマンスを持つアプリケーションは開発できないから、多少直感的でなくても隅々までコントロールできるようなUIのほうを好むのは理解できる。

しかし、これからOSXの世界においてフルスクリーンUIを広めていくためには開発者が沢山の魅力的なフルスクリーンアプリケーションを(たぶんMac App Storeを通じて)普及させていくことが不可欠だ。我々が日常的に接するIDEがいつまでも複雑なマルチウインドウUIの世界にとどまっていては、魅力的なシングルウインドウUIのアプリケーションなどできるはずもないではないか。まず開発者にフルスクリーンUIの世界になじんでもらうことで、彼らが作り出すアプリケーションにも自然にシングルウインドウの哲学を注ぎ込もうとしている。そのためにAppleはあえて、困難なIDEのシングルイウンドウ化というテーマに果敢に取り組んでいるのではないか。

そうして、OSXにシングルイウンドウUIの世界が根付いた暁にはきっとiPhone/iPod(カジュアル)→iPad→OSX(フルスクリーンUI)→OSX マルチスクリーンUI(プロフェッショナル)というようなiOSとOSXの世界を統合したようなエコシステムが生まれるに違いない。そのような意味で、OSX LionにおけるフルスクリーンUIというのは非常に重要な位置づけを担っているのではないかと思うし、これがスマートフォン/PC連携のひとつの大きなモデルケースになるのではないか。

そんなわけで、昨年秋の発表からさらに磨きがかかっているであろうフルスクリーンUI、Launchpad、Mission ControlなどのWWDC 2011での発表が今から楽しみ。できればジョブズ氏がその手で、大々的にプレゼンして欲しいなあ……。

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