2011年6月5日日曜日

WWDC 2011:「iPhoneでなければiPhoneじゃない」なのか

「iPhoneでなければ、そんなのiPhoneじゃないんです」という奇妙なフレーズのCMをAppleが放映中だけど、日本時間6月7日午前2時からのWWDC 2011で発表される予定のMac OSX LionおよびiOS 5、iCloudでその本当の意味が分ることになるのかもしれない。

言うまでもなく現在、しばらく独走状態の続いていたiPhoneに激しく迫っているのはAndroid OSだ。「無料でだれでも利用できる」Android OSを搭載した携帯電話は世界中のメーカーから発売され、Android 4.0/4.1 "Honeycomb"およびこれに続く"Icecream Sandwitch"ではタブレットも視野に入れ、いわば数の論理でスマートフォン戦争を制圧していくように見える。

こと数に目を向けてしまえばiOSは分が悪い。iOSはApple以外のメーカーにはライセンスしていないので、iOS=iPhone/iPadなのだから。機能の豊富さやデバイスの多様性に関しても同様だろう。Android Platformは「伽藍とバザール」で言うところのバザール型の最たるものであり、次第に規模の面でAndroidが優勢になっていくのは自明であるように見える。

では、そのような状況の中でAppleは、iOSに対してどのような戦略をとり得るか?圧倒的な規模と多様性に対してとり得る策とは?以前のエントリでOSX LionのフルスクリーンUIの重要性について考察したけれど、これこそがiOSエコシステムをAndroidから特異なものであり続けるのに必要なもの、いわば「iPhoneでなければ、そんなのiPhoneじゃないんです」と言えるようにするための作戦なのではないだろうか。

ここでAndroid陣営/Googleの状況について整理してみると、Android Platformこそ破竹の勢いではあるものの、デスクトップOSやその他のプロダクトとの統合性といった意味で統制が取れているとは言い難い。Android OSに載っているのは未だにChromeブラウザでは無いし、Android OSの最新の4.0/4.1はタブレット専用で、続くAndroid OS 5?の"Icecream Sandwitch"でようやくタブレットとスマートフォン向けのOSが統合される予定だ。そしてスマートフォンとタブレットOSの統合が成功したところで、Chrome OSはどうなるのか。将来的に統合されるという構想が発表されたことはあるけれどそもそもの思想が違うものだし、前途多難であることは想像に難くないのではないか。

つまりAndroid OSはその発展の過程で、ChromeまたはChrome OS、そしてその他のプロダクトとの「折り合い」を付けていく必要があり、そここそがAndroid OSが越えなければならない壁であり、この点はAndroid Platformの取っているバザールモデルの弱い点ということができる。

一方でiOSについて言えば、Apple内のプロダクトの連携性、一貫性では一日の長がある。iOSに搭載されているブラウザは始めからSafariだし、iTunesアカウントを核としたエコシステムについてはいまさら言及するまでもないだろう。

WWDC 2011において、Mac OSX Lion、iOS 5およびiCloudが発表される。OSX LionのフルスクリーンUIにおいて、OSXとiOSの間のユーザエクスペリエンスには調停がなされ、詳細は明らかになっていないけれどiCloudは(Mobile meのバージョンアップとして?)OSX/iPad/iPhoneをクラウドの向こうでつなぐ「糊」としての役割を果たすことになるのかもしれない。

仮にそのようなクラウド(iCloud)/スマートフォン・タブレット(iOS)/デスクトップの連携が実現すれば、これはiOSがユーザ体験の面でAndroid Platformを再びはるか後方に追いやるものだと言えるだろう。そうなれば、本当に「iPhoneじゃなければ、そんなのiPhoneじゃないんです」というメッセージが現実のものになるんだろう。

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